名前を呼んで

折りたたみのキャリーを持って仕事に行き

終業後速攻であの急こう配を登り切り、公園へ。

果たしてそこにあの猫がいた。

いつもごはんをあげる大木の近くの地面にうずくまっている。

そしてそのすぐ近くに背の高い人影が。

 

以前にごはんをあげていた時に話しかけてきたアジア系の人だ

詳しくは聞かなかったが、多分同じ会社に勤めている。 

彼もこちらに気づき話しかけてくる。

カリカリをあげても今日は首を振って食べてくれないんだ。

通勤中に出会うとあげられるように、いつも持ち歩いていると以前言っていたっけ。

 

うん、だから今日は病院に行こうと思って、とキャリーを見せると

安堵した表情と同時に破顔し、手伝うよと言ってキャリーを持つ。

 

嫌がって逃げたりしたらどうしようと昨夜は寝る前に色々シミュレートしていたが

猫は声をかけるとこっちを見るもののうずくまったまま、まったく動けなくなっていた。

そっと背中を撫でながら両脇を掴んで持ち上げると

にゃーとひと声鳴いたきり、特に抵抗らしい抵抗もせずに

彼の広げたキャリーにおとなしく入ってくれた。

 

同僚と待ち合わせしていると伝えると、一緒に駅まで行くと言い

猫の入ったキャリーを持ってくれた。

彼は台湾人で実家に2匹の猫がいるが、日本では飼えない住まいらしい。

そうだよね、借り上げ社宅ではきっと無理だろう。

 

病院まで一緒に行こうかと言ってくれたが

同僚の猫が通う病院は電車を乗り継ぎ、その後はタクシーで向かう予定であったし

彼の住まいと全く逆方面だったので丁重に断った。

ありがとう!とかたい握手で別れ、電車とタクシーを経て一路病院まで。

 

道中余りにも無言だったのですっかり忘れていたが

駅でペットの持ち込みを申告するのを失念していた。

ひと駅だったしまぁいいか…。

 

病院に着いてもひどくおとなしくまったく鳴かない。

緊張しているのだろう。

受付で問診票に仮の名前(♂)と、同僚から聞いていた、みかけていた期間を元に

推定4~5歳と記載。

いざ診察が始まりキャリーから出し、体重4㎏ちょいそして♀と分かる。

いつも帰宅時にしか遭遇しないから明るいところで見たのは初めてだよ

ごめん、女の子だったんだね。

口内の状態を見ると犬歯が1本欠損、ひどい歯肉炎、そして驚愕の推定10歳以上。

4~5歳は鯖読みすぎだねと獣医も苦笑。

 

① 猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)

② 猫カリシウイルス感染(FCI)

③ 猫白血病ウイルス感染(FeLV)

④ 猫免疫不全ウイルス感染(FIV)

 

①②は確実、③④も可能性は高い。

ごはんをあげているときには気が付かなかったが耳に大きな穴がある。

獣医によると避妊手術を受けさせられたときに開けられた人工的なものだそうだ。

自分が知っているその印は耳先だけをちょっぴり切るものだったが

目の前で見せられたそれは、耳のかなり付け根部分にあり

寸法も大人の親指大の大きな穴だ。 

麻酔時に施されただろうが、きっと痛んだに違いない。

ひとまずインターフェロン注射をし病院に泊めてもらう。

元々ペットホテル併設ではないので、同僚から頼んでもらい泊めて貰った感じだ。

ありがとう!

 

そして今朝、病院に電話をかけた。

緊張はしているもののごはんは食べているとのこと。

検査結果は、③は陰性、④は陽性。

う~ん。。残念だ。

陽性ではあるが発症はまだのようだ。

いつ感染したかにもよるが、年齢を考えると発症までの時間が残り少ないかもな。

 

陽性だから引き取り手もなく、外に出されていたのか

それとも陰性だったのに外に出されたから、陽性になってしまったのか。

今となってはわからないな。

 

同僚が里親をみつける団体にアプローチしてくれると言っていたが

エイズキャリアの10歳超えは難しいだろうね。

女の子の名前を考えないとな。